ダブル王子さまにはご注意を!
突然、郁美が拘束を抜け出した。
「郁美!」
近くにいた私がすぐに追いかけると、彼女は何を考えたか斜面に向けて駆けていく。
「郁美、やめて!」
「真由理!」
何もかもが真っ白になった。
彼女を助けなきゃいけない……ただ、それだけを感じて。考えもしないうちに、反射的に身体が動いてた。
自分でも、不思議だった。
よくこれだけと思うくらいにスピードが出て、あっという間に郁美に追いつく。
「郁美!」
「嫌よ! 離して、離してったらあ!!」
彼女はもがくけど、決して離すまいと私は手に力を込める。今はまさに崖っぷち。一歩間違えれば、10mはあろう下の川にまっ逆さまだ。
「郁美、話を聞いて!」
「嫌よ! もう何もかも嫌……誰も私を必要なんてしない。私はひとりぼっち……なら、いっそのこと……」
ちらっとこちらを見た郁美の絶望的な顔を見た瞬間、しまったと後悔した。
「郁美!」
「真由理!!」
彼女の身体がふわり、と浮いて崖から離れた――けど。
「させない……!」
私は、絶対に離すもんか!! と手を精一杯伸ばして、一番近くにあった突き出した岩をしっかりと掴んだ。