ダブル王子さまにはご注意を!



「いえ、香織ではないです」

「へ~佐々木さんじゃないんだ。初めて聞くなあ」


まだ出勤前の早乙女さんは制服であるブルゾンを着ながら、軽い調子で訊いてきた。


「ちなみに佐々木さんみたいに小学生からとか?」

「いえ……」


(ええ? なんで食い付いてきたの?)


ふった相手のプライベートに興味が湧くなんて、普通にあることなのかな?


けど、これはちょっとチャンスだ。フラれたとはいえまだ好きな気持ちは残ってる。彼に見られてるだけで、顔が熱くなってドキドキするし。緊張してスプーンが上手く動かせない。


来月には遠い店舗に転勤になってしまうんだから、今のうちに少しでも思い出を作っておきたかった。ほんの些細な会話でも、今の私には飛び上がるほど嬉しい。


(ありがとう、イケメン様! 会話のきっかけを作ってくれて)


「最近友達になったんです。すごく美人でお金持ちなのに女子力高すぎるんですよ」

「へぇ、お金持ちのお嬢様なのに友達に料理まで振る舞うんだ。すごいひとだね」


早乙女さんが更に興味を抱いたみたいだから、コクコクと頷く。私の友達=女性という勘違いはあえて突っ込むまい。


< 26 / 235 >

この作品をシェア

pagetop