ダブル王子さまにはご注意を!
「頼むから静かにしてて。ここは私にとって特別な……大切な場所なんだから」
「大切な場所?」
怪訝そうな声に頷くと、ベンチに座ったままその木のヒビを撫でる。もう朽ちかけて、留め具も錆びてるけど。一番古い記憶ではまだ真新しかった。
「ここができたのは確か私が幼稚園に入園する前。私はまだちっちゃかったけど……よくお父さんと遊びに来てたことは憶えてる」
「父親との思い出?」
「そ。お父さんは気弱ではあったけど、すごく優しくて……私と妹を可愛がってくれた。そんなお父さんも私が小学校に入る前に……」
「……そうか」
気のせいではなく沈んだ声に、私はアハハと笑う。
「違う、違う! お父さんは生きてるよ。ただ、私たちとは違う家族を持っただけだから」
暗くなるまい、となるべく明るく笑って、勢いよく立ち上がると体ごと後ろを向いたら。案の定暗い顔の一樹の顔。
「ほら、そんなふうに深刻になんないでよ! らしくないぞ。
親の離婚なんて今じゃ珍しくないんだからさ。あんまり重くしないでよね」
「そういうものか? だが……」
「ばか! かわいそうだとか言われるのが一番嫌なの。わかんないの? あんたも好きな人の親が離婚してたら、んな態度だと嫌われちゃうからね」
ばん、と強めに背中を叩けば、咳き込んだ一樹が「馬鹿力」と呟いたのは聞き逃さなかった。