ダブル王子さまにはご注意を!



「すべてが駄目な人間なんざよほど居ない。大抵なにかひとつはあるもんだ。
あんただって……」

「……一樹」


なんで、だろう?


一樹の声が、すごく心地いい。風に乗って香るフレグランスも……。それに包まれていると何だか彼が間近に感じるようで。


胸の鼓動が、ほんのちょっとだけ速くなってきた。


(私だって……なに?)


その先が、聞きたくて仕方ない。いつも憎まれ口をたたく一樹だけど、本当の意味で蔑んだりバカにする態度を取ったことはない。


こうして寝たふりをしながらアドバイスをくれるのも、私の話を聞かなかったことにしてくれる配慮からだ。


あれだけ散々グチられた上に絡まれて、単なる厄介ごとなのに。一樹はそれだけ優しさを見せてくれた。


表面的な優しさから言えば、兄の夏樹の方が遥かに優しいし人受けもいいと思う。


だけど、私は。


一樹のこんな不器用なわかりやすい優しさの方が好きだ、と。そう感じた。



< 95 / 235 >

この作品をシェア

pagetop