イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「いや……まあ、そうか。おまえ、少し前まですきな男いたんだしな」

「……そうですよ。この歳にして初恋ではありましたけどね」

「え?」



驚いた拍子に再び尾形さんがこちらを見た。

今度は私がその視線を避けて、顔を前へと向ける。



「まあ、世間一般的に見たら遅いですよね、初恋がハタチって。引きました?」

「いや……別に引きはしないけど」



店こっち、と尾形さんがさりげなく私の肩を押して路地を曲がらせた。

適当に歩いて入れそうなお店を探してるのかと思ったけど、きちんと目的の場所があってそこに向かっていたらしい。

ほんと、憎たらしいくらいスマートだよなあといつも思う。



「尾形さんは、どうして私が男ギライかもって思ったんですか?」



今度は私の方が質問してみる。冷気に凍りそうな白い息を吐きながら、尾形さんは軽く顔を上向けた。



「『どうして』ってまあ……ほぼなんとなくだけど。さっきあのチャラ男に絡まれたときもなんも言えないで固まってたから」

「元々私、人見知りなんですよ。ああいうとき、もっとうまく立ち回れたらなとは思ってるんですけどね」



話しながらつい苦笑がもれる。外見で『おとなしそう』とか『気が弱そう』だとかよく評される私は、そのせいか押しの強いタイプの男性から絡まれることがたまにあるのだ。

さっきのも、たぶんまさにそれだった。男性からするとちょっと強めに言えば流されて懐柔できるかも、なんて、そんなちょろそうな女に見えるのかもしれない。

本当はもっと、堂々とした強い女性になりたいんだけどな。
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