イジワルな彼に今日も狙われているんです。
というかこの人って、簡単に私の頭触ってくるよね。名前といえば最初に話したあの夜は私のことさん付けしてたけど、次に会ったときにはもう呼び捨てだったし。

まあ、それが嫌ってことはないんだけど。私には真似できないくらい、尾形さんは他人との距離の詰め方がとても上手な人だ。

でも、頭ぽんぽんは……こういうのは、あんまり簡単にやっちゃいけないと思うんだけどなあ……。


そしてふと、思う。……尾形さんはこういうこと、片思いしてた女性にもやってたのかな。

それともこれは、私を子ども扱いしてるからなのか。わあそれ普通にありえる。



「っえ、いたっ!」



突然ひたいを襲った衝撃に声をあげた。じんじんと痛みを訴えるそこを両手でおさえあわてて顔を向ければ、尾形さんがデコピンをしたポーズのままにやにやとこちらを見下ろしている。



「いっ、いきなり何するんですか……?!」

「歩きながら眉間に思いっきりシワ寄せてるから。伸ばしてやろうと思って」

「余計なお世話です! ほんと痛い……!」

「ははっ」



涙目で恨みがましく見上げても、尾形さんはどこ吹く風で笑うだけだ。

もう、とわざとそっぽを向く私の頭に、今度は2回軽く手を弾ませる。



「ごめんごめん。怒んなって」

「……デザート、奢ってくれたら許します」

「ハイハイ。かしこまりましたお嬢様」



やっぱり、子ども扱いだ。そう思うと同時に、なぜか胸の中に小さなもやもやが生まれる。


きっと──ずっと想いを寄せていた幼なじみの女性に対しては、こんな子ども扱いしないんだろうな。

本当に自然に、そんなことを考えて。そしてすぐ、自分が考えたことに愕然とする。


ばかじゃないの、私。すきな相手とただの職場の後輩じゃ、扱いに差があるのは当然じゃない。

こんな──こんなの。尾形さんの片思い相手と自分を一瞬でも比べるだなんて、おこがましいにもほどがある。

自らの思考を振り払うように、小さくかぶりを振った。幸い尾形さんはそんな私の様子に気付いていないみたいで、前を向いたままこれから行くお店の話をしている。

私はこっそり安堵しながら、低すぎず高すぎない心地良いその声に耳を傾けた。
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