イジワルな彼に今日も狙われているんです。
人知れず深呼吸して動揺を抑えようとした後、私はようやく口を開く。
「えっと、あ、ありがとうございます……?」
まっすぐ正面から顔を見るのは気恥ずかしくて、上目遣いでうかがうようにちらりと尾形さんへ視線を向けた。
私のささやかなお礼の言葉には、特に反応を示さない。
ただ真顔で、じっとこちらを見つめてくるから、私はどうしたらいいかわからなくなって同じように尾形さんを見つめ返す。
ドキドキと心臓がうるさい。これはアルコールを摂取して気分が高揚しているせいなのか、それとも別の理由なのか。
わからないけど、それでもこのドキドキは、別に嫌じゃない。
「……木下、」
尾形さんが、まるでひとりごとを言うみたいに私の名前を呼んだ。
店内の照明を映してキラキラに見えるヘーゼル色の瞳から、目が離せなくて。尾形さんの右手が自分に向かって伸ばされるのがわかっても、私は動かなかった。
テーブルの向こう側から伸びたその手が、そっと私の横髪に触れる。
今までは子どもにするように頭を叩かれたり、ちょっと乱暴に髪をくしゃくしゃにされたり。そんなふざけた感じの触れ方しかされたことがなかったから、驚いた心臓がどくんとはねたのを感じた。
顔が、熱い。尾形さんの手は直接肌に触れてるわけじゃないのに、まるでその指先から熱が伝わってるみたい。
私の髪を一房すくい上げたまま、尾形さんが何事か口を開きかける。
その瞬間、どこからかやけに大きくスマホの振動音が聞こえて。それと同時に、尾形さんがパッと私の髪から手を離した。
音の発信源は、テーブルに置いた尾形さんのスマホだったらしい。視線を向けながら一瞬呆けていた様子だったけど、彼がおもむろにそれを手に取った。
「(びっ、くり、した……)」
未だどくどくとうるさく鳴り止まない胸に、ぎゅっと片手をあてる。
何だったんだろう、今の。金縛りにあったみたいに動けなくて、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえて。
私を見据える尾形さんから──目が、逸らせなかった。
「えっと、あ、ありがとうございます……?」
まっすぐ正面から顔を見るのは気恥ずかしくて、上目遣いでうかがうようにちらりと尾形さんへ視線を向けた。
私のささやかなお礼の言葉には、特に反応を示さない。
ただ真顔で、じっとこちらを見つめてくるから、私はどうしたらいいかわからなくなって同じように尾形さんを見つめ返す。
ドキドキと心臓がうるさい。これはアルコールを摂取して気分が高揚しているせいなのか、それとも別の理由なのか。
わからないけど、それでもこのドキドキは、別に嫌じゃない。
「……木下、」
尾形さんが、まるでひとりごとを言うみたいに私の名前を呼んだ。
店内の照明を映してキラキラに見えるヘーゼル色の瞳から、目が離せなくて。尾形さんの右手が自分に向かって伸ばされるのがわかっても、私は動かなかった。
テーブルの向こう側から伸びたその手が、そっと私の横髪に触れる。
今までは子どもにするように頭を叩かれたり、ちょっと乱暴に髪をくしゃくしゃにされたり。そんなふざけた感じの触れ方しかされたことがなかったから、驚いた心臓がどくんとはねたのを感じた。
顔が、熱い。尾形さんの手は直接肌に触れてるわけじゃないのに、まるでその指先から熱が伝わってるみたい。
私の髪を一房すくい上げたまま、尾形さんが何事か口を開きかける。
その瞬間、どこからかやけに大きくスマホの振動音が聞こえて。それと同時に、尾形さんがパッと私の髪から手を離した。
音の発信源は、テーブルに置いた尾形さんのスマホだったらしい。視線を向けながら一瞬呆けていた様子だったけど、彼がおもむろにそれを手に取った。
「(びっ、くり、した……)」
未だどくどくとうるさく鳴り止まない胸に、ぎゅっと片手をあてる。
何だったんだろう、今の。金縛りにあったみたいに動けなくて、自分の心臓の音がやけに大きく聞こえて。
私を見据える尾形さんから──目が、逸らせなかった。