イジワルな彼に今日も狙われているんです。
「すみれ、そろそろ行くぞ。長々しゃべってたら風邪ひく」
「あ、うん。そうだね」
クガさんに言われ、すみれさんは素直にうなずいた。
このふたりは、恋人同士なのだろうか。それにしてもすみれさん、見た目と中身にちょっとギャップがあって、楽しい人だ。
「おー、バカップルはとっとと行け行け」
右手を振ってしっしと追い返すような仕草をする尾形さんにまたすみれさんが口を開きかけていたけど、今度はなんとか堪えていた。
またね、と、去り際にすみれさんが笑顔で言ってくれる。彼氏のクガさんも軽く会釈して、ふたりは駅の方へと歩いて行った。
「あー……悪かったな木下。騒がしい知り合いで」
並んで歩く後ろ姿が遠のいてから、尾形さんがぽつりとつぶやく。
私はそれに、小さく首を横に振って答えた。
「いえ……あの、ちなみに大きい男の人が言ってた、『沖田 総司になるための婚活』って……?」
先ほどから気になっていたことを訊ねてみると、尾形さんが苦い顔で頭をかく。
「ああ、あれな。……俺の名前、『総司』だろ? だから新撰組の『沖田 総司』と同姓同名になるために将来は沖田って名字のご令嬢のところに婿入りするんだーって昔からふざけて言ってたんだよ」
答える彼は、どことなく気恥ずかしそうだ。
私はつい笑ってしまいながら言葉を返した。
「へぇ……そんなこと言っちゃう尾形さんもそうですけど、楽しい人たちでしたね」
「楽しいっつーか、あれはただガキっぽくてうるさいだけだな」
ため息を吐きながら、呆れたように尾形さんは言う。
でも、その表情が。苦く笑うその顔が、心の底では“あの人”を大切にしていると教えるから。
『しかも俺なんて、相手幼なじみだからな? ガキの頃からこじらせてた年季入った片思い、まっさかこのタイミングで終了するとは思わなかったわー』
『私、深町 すみれっていいます。一応、そこにいる尾形 総司くんの幼なじみってやつ』
あの人は──すみれさんは、尾形さんが昔から、ずっとすきだった人。
ずっと、大切に想ってる人。
それに気付いてしまった今、私はどうしてか、うまく笑うことができない。
「あ、うん。そうだね」
クガさんに言われ、すみれさんは素直にうなずいた。
このふたりは、恋人同士なのだろうか。それにしてもすみれさん、見た目と中身にちょっとギャップがあって、楽しい人だ。
「おー、バカップルはとっとと行け行け」
右手を振ってしっしと追い返すような仕草をする尾形さんにまたすみれさんが口を開きかけていたけど、今度はなんとか堪えていた。
またね、と、去り際にすみれさんが笑顔で言ってくれる。彼氏のクガさんも軽く会釈して、ふたりは駅の方へと歩いて行った。
「あー……悪かったな木下。騒がしい知り合いで」
並んで歩く後ろ姿が遠のいてから、尾形さんがぽつりとつぶやく。
私はそれに、小さく首を横に振って答えた。
「いえ……あの、ちなみに大きい男の人が言ってた、『沖田 総司になるための婚活』って……?」
先ほどから気になっていたことを訊ねてみると、尾形さんが苦い顔で頭をかく。
「ああ、あれな。……俺の名前、『総司』だろ? だから新撰組の『沖田 総司』と同姓同名になるために将来は沖田って名字のご令嬢のところに婿入りするんだーって昔からふざけて言ってたんだよ」
答える彼は、どことなく気恥ずかしそうだ。
私はつい笑ってしまいながら言葉を返した。
「へぇ……そんなこと言っちゃう尾形さんもそうですけど、楽しい人たちでしたね」
「楽しいっつーか、あれはただガキっぽくてうるさいだけだな」
ため息を吐きながら、呆れたように尾形さんは言う。
でも、その表情が。苦く笑うその顔が、心の底では“あの人”を大切にしていると教えるから。
『しかも俺なんて、相手幼なじみだからな? ガキの頃からこじらせてた年季入った片思い、まっさかこのタイミングで終了するとは思わなかったわー』
『私、深町 すみれっていいます。一応、そこにいる尾形 総司くんの幼なじみってやつ』
あの人は──すみれさんは、尾形さんが昔から、ずっとすきだった人。
ずっと、大切に想ってる人。
それに気付いてしまった今、私はどうしてか、うまく笑うことができない。