イジワルな彼に今日も狙われているんです。
気を抜けば震えそうになる声を、必死に抑える。
「……ありがとうございます」
言いながら、尾形さんの大きな手に自分の手のひらを重ねる。
テーブルの下からぐいっと力強く引き上げられ、少し加減を間違えたのか、勢いあまった私の身体が尾形さんに軽くぶつかってしまった。
ほんの一瞬だけ、彼の香りに包まれる。尾形さんはすぐに私の肩を掴み、自分の胸から引き離した。
「……行くか」
ひとりごとのようにつぶやいたかと思えば、そのまま踵を返して出入り口のドアへと向かう。
ふたりきりのエレベーターの中、私たちはずっと無言だった。それでも私が降りる12階に到着したとき、尾形さんが沈黙を破る。
「……土曜日の件は、また後で連絡するから」
うなずいた私は、彼に背を向けてエレベーターを降りる。
背後でドアが閉まる音を確認したところで、詰めていた熱い息をそっと吐き出した。
……土曜日。一体、何があるんだろう。
考えたところでわかるはずもない。男の人が──尾形さんが考えることなんて、私にはさっぱり予想できないのだから。
先ほど、会議室で尾形さんに引き起こされたときに触れた右手を見つめる。
本当についさっき、触れていたのに。そのぬくもりはもう、とっくに消えてしまった。
『あーあ、同じ時期に揃って失恋とか残念だな俺ら。せっかくだしふたりで失恋同盟でも組むか』
私と尾形さんは、似たもの同士で。
長く続いた片思いを終わらせずにいるあの人のことだけは、絶対、すきになんてならないと思ってた。
すきになっちゃいけないと、思ってた。
「(……なのに、なんで)」
きっと、叶うわけないと。不毛だと、知っていたはずなのに。
なんで私はこんなにも、尾形さんのことをすきになってしまったんだろう。
「……ありがとうございます」
言いながら、尾形さんの大きな手に自分の手のひらを重ねる。
テーブルの下からぐいっと力強く引き上げられ、少し加減を間違えたのか、勢いあまった私の身体が尾形さんに軽くぶつかってしまった。
ほんの一瞬だけ、彼の香りに包まれる。尾形さんはすぐに私の肩を掴み、自分の胸から引き離した。
「……行くか」
ひとりごとのようにつぶやいたかと思えば、そのまま踵を返して出入り口のドアへと向かう。
ふたりきりのエレベーターの中、私たちはずっと無言だった。それでも私が降りる12階に到着したとき、尾形さんが沈黙を破る。
「……土曜日の件は、また後で連絡するから」
うなずいた私は、彼に背を向けてエレベーターを降りる。
背後でドアが閉まる音を確認したところで、詰めていた熱い息をそっと吐き出した。
……土曜日。一体、何があるんだろう。
考えたところでわかるはずもない。男の人が──尾形さんが考えることなんて、私にはさっぱり予想できないのだから。
先ほど、会議室で尾形さんに引き起こされたときに触れた右手を見つめる。
本当についさっき、触れていたのに。そのぬくもりはもう、とっくに消えてしまった。
『あーあ、同じ時期に揃って失恋とか残念だな俺ら。せっかくだしふたりで失恋同盟でも組むか』
私と尾形さんは、似たもの同士で。
長く続いた片思いを終わらせずにいるあの人のことだけは、絶対、すきになんてならないと思ってた。
すきになっちゃいけないと、思ってた。
「(……なのに、なんで)」
きっと、叶うわけないと。不毛だと、知っていたはずなのに。
なんで私はこんなにも、尾形さんのことをすきになってしまったんだろう。