イジワルな彼に今日も狙われているんです。


◇ ◇ ◇


尾形さんが指定した土曜日は、寒さが和らいだ気持ちのいい青空だった。

メールで知らされた待ち合わせ場所に約束の10分前に到着した私は、すでに立っている見知った姿を見つけあわてて駆け寄る。



「ごめんなさい、遅くなりました……!」



近付く私に気付いた尾形さんは寄りかかっていた時計塔から身体を起こし、こちらを見て薄く微笑んだ。



「遅くねぇだろ、むしろ早いし。おはよ。じゃなくてこんにちは?」

「こ、こんにちは……」



たった十数メートルの距離を走っただけで息が上がってしまった私は、胸に手を添え呼吸を整えつつ挨拶を返す。

そんな私の姿を見た尾形さんは可笑しそうに笑って、何かを差し出す。



「入場券買っといた。中入ろうぜ」

「え! あ、すみませんっ、お金……!」

「いーって。俺が誘ったんだから」



言うなり持っていたチケットの1枚を私の手に押し付けると、尾形さんはさっさと入場ゲートに向かって歩き出してしまう。

まったく聞く耳持たない様子の尾形さんにあわあわしつつも、その背中を追いかけた。


約束の今日。尾形さんが待ち合わせ場所に指定したのは、『ウィングスタウン』という遊園地の前だった。

たしか東都ウィングスというプロ野球団が運営……ん? 球団のオーナーが運営? ……よくわからないけど、そんな感じのあまり規模は大きくない遊園地だ。

子どもの頃何度か来たことはあるけど、大人になってからは訪れたことがない。そんな場所を今尾形さんとふたり並んで歩いているなんて、なんだか変な感じ。
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