イジワルな彼に今日も狙われているんです。
悶々としつつ、けれども彼の質問に答えなければと、なんとか言葉をしぼり出す。



「……告白、しましたよ。その場ではっきりと断られましたけどね」

「そっか」



つぶやいて、再び窓の外へと視線を向ける尾形さんは。一体今、何を考えているのだろう。

眼前に広がる街並みを、夕陽がオレンジ色に染めていく。ゴンドラの中で向かい合う、私と尾形さんのことも。



「木下、覚えてる? こないだ俺の行きつけの居酒屋に向かって歩いてる途中に、会ったカップルのこと」

「……覚えてます」

「気付いたと思うけど、あの彼女の方が、俺の幼なじみでずっとすきだったヤツ」



淡々と話す尾形さんの夕陽色に染まる横顔を見つめながら、私はあの日出会った恋人たちのことを思い出す。

とても、幸せそうなふたりで。きっと辛いはずなのに、尾形さんはそれを見せず、楽しそうに笑ってた。



「俺の場合はなんつーかもう、ただの勢いでさ。そのときは告るつもりなんてなかったのに、アイツが他の男に盗られるかもって考えたら頭に血がのぼって。気付いたら、自分の気持ち押し付けるみたいに口走ってた」

「………」

「まあ、あの男がいなくても、きっと俺は振られてたんだろうけど。アイツにとっての俺は……ガキの頃からずっと、兄貴みたいなモンだったから」



私はなんと言ったらいいのかわからなくて、ただ黙って尾形さんの話に耳を傾ける。

はからずも“失恋同盟”を結成することになった日から今日まで、前の恋のここまで詳しい話は聞いたこともしたこともなかった。ただお互いに、失恋したという事実をなんとなく知っていただけ。


尾形さんは今、どういう気持ちでこの話をしているんだろう。

どういう、つもりで。
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