純愛小説家
その頃の琴音は、まだまだ無名の新人で。
顔出しをしてなかった俺も、無名同然。

ふたりでどこに出かけても、気づかれることもなく。


「矢野、サン…」
「…宥…」
「えっ…?」
「俺の本名…」
「…ヒロ…」
「琴音…」


そういう関係になるまで、


「……─────」


時間はかからなかった。

撮影が深夜まで、なんてことはザラで。
それでも琴音は俺に会いにきたし。

俺も仕事で、深夜まで起きてるのは日常で。
琴音も気兼ねなく、来られる環境だったんだろう。

好きとか、つき合おうとか、お互いそんな言葉もなく。

でも。


「面倒だから、ここに住めば?」


もし、あったとするなら。


「え…、ほんとに…?」
「ほんとに」


それが、そうなんだろう。


「うん!」


琴音も。
満面の笑みで頷いた。

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