好きだと思うんですがっ!?
一瞬、眩暈がした。
目の前にチカチカとした星が瞬いたように見えた。
「俺と付き合っちゃおうよ。俺、絶対アイツなんかより浮田さんの事大事にする自信あるよ?」
駅にはたくさんの街灯があって、その光のせいで星の光は隠れてしまっている。
「ほら、俺結構モテるんだよ? サッカー部でもスタメンだし。顔もそんな悪くないと思うんだ」
本当はもっとたくさんの星があるはずなのに、今あたしの空の上で瞬いているのは月くらい。
その月がとても寂しそうに、ぼんやりと輝いている。
「頭だって中の上だしさ。お得でしょ?」
あまりにも月が寂しそうに見えるからかもしれない。
あたしはそんな空を見上げて、涙が出そうになった。
「……ありがとう」
「なにそれ。その言葉の意味が分からないんだけど」
嘘ばっか。
察しの良い古柳くんが分からない訳ないでしょ。
「あたし、やっぱり……」
「ダメだよ。うんって言うまで離さないから」
あたしを抱きしめてる腕が、更に強くなった。
それはあたしを縛って逃さないようにしてるのかと思ったけど、きっとそうじゃない。
そうだよね? だってこれじゃ、大事なおもちゃを取り上げられそうになって駄々をこねてる子供みたいだから。
古柳くんらしくない。けど、古柳くんらしいってなんだろう。
同じクラスなのに、最近まであまり古柳くんと話さなかったから、彼のことをよく知ってるとは言い難い。
だから、本当の古柳くんはこういうひとなのかもしれない。
星野くんはあたしのことが好きだって思っていた、あのあたしの思い込みと同じように、あたしが知ってると思っていたものは、本当は真実なんかじゃないのかもしれない。