ダブルベッド・シンドローム
「あんたたちね、分かってるの?もし私と慶一さんに子供ができたら、オバチャンになるのはあんたたちなのよ?」
上手いことを言ってやった、と得意気になったのだが、双子はポカンと口を開けていた。
驚いたのは、慶一さんも手を止めて、同じ顔をしていたことだ。
そして初めて、私は少しばかり先走ったことを言ってしまったのかもしれない、いや、言ってしまった、と、そう反省したのである。
「いや、えっとその、」
「菜々子と慶一に、子供ができるの?」
「子供ができるの?」
「ていうか、だから、何と言うかそれは、」
もごもごと言葉を籠らせながら、視線を泳がせると、こちらを見ていた慶一さんと、目が合った。
慶一さんは、初めて合ったときの桜さんのような、爽やかな笑顔で、「いいですね、それ」と言った。
また私の顔を覗き込んできて、今度はニヤニヤとし始めた双子に、私は恥ずかしさが最高潮になったため、ついに家具の位置を指示するという役目を放り出して、ベランダへと逃げた。
双子に「あっ逃げた」と指摘されたが、そのときちょうど良く携帯電話が鳴ったため、私は途中でそれを捕獲してから、ベランダへと出た。
「はい、もしもし。」
『あ、菜々子?』
「え、」
画面をよく確認しないまま電話に出たために、また母からだと思っていた声とは全く違っていて、私は一度、耳から離して画面に映し出されている名前を確認して、そしてその名前に一度驚いてから、また耳につけた。
「うそ、ユリカ?」
『嘘じゃないわよ。私、今さ、別居してるの。』
「嘘つけ。喧嘩して実家に戻ってるんでしょ。」
『なんだ、バレてんのね。』
どうして今まで電話に出なかったのか、ユリカがあまりに普通に話すものだから、それを問い詰める気にはなれなかった。
しかしユリカは、それについて、あっさりと種明かしをし始めた。
『電話出れなくてごめんね。喧嘩してざまぁみろって思われたら癪だから、かけ直さなかったのよ。』
「えぇ・・・」
見透かされていたということなのだが、それを全く悪いと言わないユリカに、私はやはり、この子には敵わないと思ってしまった。
『私さ、なんだかんだ、旦那が忙しいの、寂しいのよ。家で帰りを待ってても、帰れなかったり、帰ったあとすぐに職場に呼ばれて行ったりして。』
「・・・知ってる。」
『うちの旦那おバカだから、あんまりそういうの気づかないから。』
私は、電話をしながら見えるこの広い広い景色が、ユリカも見えるようになるだろうかと、そんなことを思って、笑った。