ダブルベッド・シンドローム




─私が堂島親子と関わるようになったのはほんの数ヶ月前からなのだが、初めて会ったのは父親である社長の方であった。

宮田家に押し掛けてきて、父に「覚えてる?」と慣れ慣れしく話しかけて、父は覚えていなくて答えられなかったのだが、まったく気にしていない様子で「会えて嬉しいよ」なんて言っていた。

確かそのとき北山さんも、社長の背後に立っていた。


玄関で二人が話す様子を、家の中で隠れて見ていたのを覚えている。


『宮田くん!堂島だよ!同級生じゃないか。』

『え?えぇ、ああ!そうか、堂島くんね!思い出したよ。あの、お金持ちだった、大きな家に住んでた堂島くんだよね?』

『あはは、そんな覚え方だったのかい?いやね、最近この辺に越してきたんだけど、この間、偶然宮田くんがここに住んでるって聞いてね、訪ねてみたんだ。』


とても、仲の良い友人同士の会話とは思えず、母と二人で不信に思い、父に加勢するつもりで玄関に出た。

父は怪しい壺を売り付けられるタイプであるから、私たちはついにそれだと思ったのだ。


しかし、そのとき社長は私を見て、美しい顔をさらにキラキラとさせて、こう言ったのだ。


『これはこれは、お嬢さん、うちの息子と同い年ですよね。どうです?是非、うちの息子なんて。』




社長はこうして、出会ったときから、私を気に入っている様子であった。

私の何がそんなに良かったのかは分からないが、私はそれを問いかけたこともない。
そりゃそうだ、私のどこが気に入っているのですか、など、聞けはしない。

あの日の玄関先での結婚話に、一番に乗ったのは父だった。

私と母は冗談だと思って聞いていたのだが、その日社長が帰ったあと、父は社長と頻繁に連絡をとり、息子本人である慶一さんと会う席まで決めていたのだ。

ただ、母は良い顔をしなかった。


『あなた、お相手がお金持ちなのも、知った人の息子さんなのも結構よ。でもね、強引に結婚話を進めても、それが菜々子のためになるとは限らないでしょ。結婚ってそんな簡単なものじゃないわ。』


母は私が実家に居着いているのを良く思っていなかったのに、そんなことを言うのは意外であった。

そして、父以上に、私のことを考えてくれているのだと知ったのだ。

しかし、実際に慶一さんと会ってみたら、私も母も、彼の悪いところを見つけることはできなかったのだ。


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