ダブルベッド・シンドローム
しかし、働きたいという自分の気持ちを抑えられず、そこはユリカと違う行動をとったのも事実である。
しかし、ユリカが浜田先生と結婚し、寿退社をしたことは、絶対的な幸せの一手であってほしかった。
「働くって、どうするの?どこかあるの?」
『馬鹿ね。私はアンタと違って、持ってる資格を使わないなんてことはしないわよ。長いこと家に籠ってた私を、今更雇ってくれるところなんて、ないんだから。また看護師するしかないでしょ。』
「ええぇ、えぇ~、嘘ぉ・・・」
『まあ、まだ分かんないけど。思い付いただけだから。』
聞きたいことはまだ山ほどあったのに、ユリカは半ば無理矢理、「じゃね」と言って、通話を切った。
──浜田先生は、私たちが働いていた当時の病院で、絶大な人気を誇っていた。
医者というものは、どこかクセのある人が多かったけれど、彼は珍しい、人懐こくて気の利く、後輩肌の先生だった。
三つ年上だったけれど、私たちより後に病院へやってきて、それはもう、可愛いらしく「後輩」という感じで接してきたのである。
『宮田さんは可愛いから、すぐ彼氏ができるよ。俺が保証する。』
ユリカのことが好きなのに、私にもそんなことを言っていた。
女性を喜ばせるのが上手で、たいそうモテた。
看護師は、皆彼にメロメロだった。
私の洞察力に間違いがなければ、それは天然だったように思う。
ユリカとお似合いだった。
ユリカは何でもできたし、本音を隠していれば、男からみても、かなり良い女だったはずだ。
二人が付き合い始めたと知ったとき、相手がユリカで良かったとさえ思ったのだ。
先生は変な人に引っ掛かってしまいそうだったから、しっかりした現実主義のユリカで、安心した。
そんな理想的な結婚をしても、家を出たくなるのだろうか。
ユリカがあんなに拘っていた「結婚」とは、何だったのだろうか。
結婚とは、何なんだ。
私がこれからしようとしているもの、たどり着こうとしているものは、一体何なんだ。