ダブルベッド・シンドローム
向こう側に見える北山さんは、小さな女の子を二人、連れていた。
その絵面から、決して北山さんの子ではない、と分かるほど、彼女はその子たちに対して、事務的な対応であった。
あっちへ行きたい、と、北山さんの手を引っ張っているのに、彼女は「かしこまりました」と言って、ヒールの音を鳴らしながら、速度を乱すことなく、そちらへ向かおうしていた。
「あの、専務、あちらに、北山さんが・・・」
指をさして、専務が後ろを振り向くと、北山さんも、こちらに気がついた。
北山さんは、少しだけ顔を歪めた。
しかし、すぐに、小さな子たちに向かって、専務のことを指し示しながら、何かを伝えていた。
「慶一!慶一だ!」
「ほんとだ!慶一がいる!」
子供たちは、小さな手の指、一本一本をピンと張って、専務のことを指さした。
そして、ぴょこぴょこと、こちらへ寄ってくるのだった。
「・・・こんにちは。偶然ですね。」
専務は、子供たちに対しても、北山さんに対しても、その一言で、まとめて挨拶をした。
私も、この子供たちのことは分からないが、ペコリと頭を下げていた。
「専務。宮田さんも。本当に偶然ですね。お買い物、なさるんですね。」
北山さんはときどき、嫌みを言っているのか、思っていることが言葉の端から出てしまうのか、分からないことがあった。
しかし、それは少し、専務に似ているとも思った。
彼女の質問には、専務が答えた。
「はい。北山さんは、父の用事ですか?」
「ええ。マイさんと、メイさんを、少しの間お連れするように、社長に言われたので。買い物がしたいというので、こちらにお連れしたんです。」
「そうですか。お疲れ様です。」
マイさんとメイさん、と呼ばれた十歳くらいの二人の子供は、随分と可愛らしい女の子だった。
双子のようで、赤と青の色ちがいの、同じワンピースを着ていて、お人形のようであった。
それが、私を睨み付けるように、ジロジロと見ていた。