ダブルベッド・シンドローム


専務の求めていた納得できる説明とやらを、どうにかひねり出すことに成功した私は、もうこの状況を打開したも同然だと感じていた。

私はおそらく、問題に対し、解決したと感じるポイントが、元から人より浅いのだ。

今回の問題に関しても、専務が味方についてくれさえすれば、それで良かったのだ。

どんなに調べられようとも、自分の潔白は分かっており、それが明らかになるまで誰に疑われようとも、専務が信じてくれるのなら別に構うことはない。


「はあ、どうしましょうかねぇ、専務。宮田さん、こう言ってますけども。ご婚約者をあまり疑うのは失礼ですけども、こちらは疑うのが仕事なもので、取り合えず、USBの中を調べてみますけれども。」


橋田部長がイライラしながらそう言おうと、私は不安も恐れもなかった。

しかし、そう思っていたが、専務の妙な冷たさは、この一番発揮してほしくないタイミングで、また現れたのだ。


「菜々子さんの言っていることが本当か、そうでないかは、僕には判断つきませんから。システムの方々にお任せして、調べていただくしかありません。それに、まずは誰がやったのか、ということよりも、そのメモリの中に、何のデータが入っているかの方が重要です。流出したら株式に影響する情報が入っていた場合、大問題になります。まずはそちらをすぐに調べていただいていいですか。」

「分かりました。社長には、報告はどうしますか?」

「連絡を入れましたが、今は出掛けているので、戻ったら、僕から報告します。」

「よろしくお願いします。」


USBメモリーに入っているデータは何なのか、それは本当に重大なことのようで、それを専務に指摘されると、私を責めることに夢中になっていた橋田部長も顔を青くして、すぐにこの会議室を出ていった。

総務部長も、まるで面倒事に付き合わされていたかのように、「それでは」と言って出ていった。


私と専務は、この会議室に取り残されたわけであるが、それは好都合だった。

私の話は、まだ終わっていなかったのだ。

いや、正確には、終わりにすることができなくなった。

私は専務の態度に、我慢ならなくなったのである。

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