ダブルベッド・シンドローム
主催の会社は、素材メーカーであり、医療器機に使われるシリコンや化学繊維の開発が進んでいるようで、DOSHIMAとは昔からの付き合いがあるらしかった。
主催者である川本社長は、私たちと挨拶を済ませると、彼は自分の子供の可愛さ自慢をしたいために、社長にばかり話しかけるので、ご令嬢のフリをしてニコニコすることに疲れていた私は、助かったと肩の力を抜いていた。
しかしうちの社長も、彼に合わせて、マイとメイが可愛い、という話をし始めたので、私は気分が悪くなり、専務の腕の裾を引っ張った。
「どうしました?」
「なんだか退屈になってきました。」
「えっ」
「本当は専務とお話していた方が楽しいです。」
私は、社長がしている双子の話を聞く必要がないことと、私は常に専務のことを拠り所にしていること、それが専務に伝わればいいと思ったのだ。
私には、社長も、奥様も、双子のこともどうでも良くて、今日、こうして気を張って頑張っているのは、すべて専務のためなのだ、と。
別に、本当に今、専務とお話がしたいから何とかしろ、という意味ではなかったのだが、専務はコクリと頷いて、私の手を握った。
専務は、うちの社長と川本社長が話しているところに、「すみません」と言って割り込むと、私が人混みに酔ったから休ませたいという嘘の説明をした。
川本社長がこんなときのために、ホテルに何部屋か用意していたというので、それを一室お借りすることになり、私たちはフロントでキーをもらい、その部屋へ向かった。
専務は、ずっと私の手をひいたままでいるので、まるで王子様のようだと思わずにはいられなかった。