ダブルベッド・シンドローム
そこに気がついた私は、隣に座る専務が、心の内ではものすごい葛藤を繰り広げているのではないかと思うと、とてもリラックスをする気には戻れなかった。
つまりはどういうことかと言えば、専務は、奥様に、社長を譲ったのだと思うのだ。
奥様が待ち合わせ場所に来ないのも、一緒に挨拶をする気がないのも、専務を避けているからだとしたら、そしたら、専務がそこから離れてしまえば、奥様は社長と一緒にいることができるのだ。
専務にそこまでさせてしまう奥様に腹が立つのと同時に、専務はなぜそこまで、奥様のことを考えた行動をとってしまうのかと理解に苦しんだ。
「菜々子さん・・・」
すると、専務は、私の首もとに、顔を埋めてきた。
「せ、専務?」
突然のことに、ベッドの上でバランスを崩したが、手をついて体を支え、もう一方の手は専務の頭に添えて、髪を撫でることにした。
私は専務のこの行動は、もしや寂しさからではないかと一瞬疑ったが、しかし、最近の専務は、私を愛するための努力を惜しまないので、やはりこれもその一環なのだろうと考えついた。
「専務、あの、」
専務は私に、唇をつけているわけではなくて、ただ私の首もとに収まっているだけだった。
しかし、こちらの身が固くなる程度には、快感があった。
「すみません、菜々子さん、嫌でしたか?」
「ま、まさか、嫌なわけはないですが、その、」
私は、弱い力で、専務の体を押し戻し、
「そんなに頑張っていただくこと、ないですよ。こんなときくらい、本当にリラックスしていただいて大丈夫ですから。」
そう言った。
しかし専務は、また首もとに顔を持っていって、今度は唇をつけた。