ダブルベッド・シンドローム
「浜田先生?え、何、どうして、何でここにいるんですか?川本社長とお知り合い?」
浜田先生はスーツだった。
私は彼のスーツ姿を見たのは初めてだった。
白衣のときは、彼の柔らかさが強調されていたが、スーツになると、ギラギラとした男らしさが滲み出ているようであり、私は、この人は白衣の方が数段良い、とさえ思った。
こんなところで、こんなタイミングで、こんなシチュエーションで、浜田先生の男らしさを見せつけられることなど、ありがた迷惑でしかなかった。
彼もシャンパンを持っていた。
彼は話し出す前に、カチンと、私のグラスに、自分のグラスを当てた。
「いやすごい偶然だね!何でここにいるのかって、俺のセリフなんだけどね。俺の方は、川本さんと知り合いで、守秘義務があるんで詳しくは言えないけど、ね。まあ、つまりは彼の主治医なの。ナイショね。」
「そうなんですか・・・。」
子煩悩なあの川本社長が、一体何の病気にかかっているのかは知らないが、それを聞くことは、守秘義務うんぬんのため禁止事項であると分かっていた。
正直に言えば、川本社長のことなど知りたいわけではないので、そこには特に興味もなかったから、聞く必要も感じなかった。
「で、宮田さんの番だよ。なんでここにいるの?」
「ああ、えっと、今、取引先の会社に勤めていて、それで、」
「えっ、そうなの?どこ?」
「DOSHIMAです。」
「ああ、DOSHIMA!すごいね、大企業じゃない。うちの病院でも、CTとか、MRIとか使ってるよね。ほとんどそうじゃない?たまに営業さん来るし。へえ、すごいなぁ。そっか、川本さんのところと共同開発とかしてるし、関わり深いもんね。」
私が勤めるまで、まるで知らなかったことを、浜田先生はよく知っていた。
彼は人の懐に入り込むのが上手いので、こうして無意識に情報通になるのであり、川本社長にも気に入られているに違いなかった。
先生と私は、ユリカという大きな共通点があるのに、私はそれ以外で共通点があることを探したくなかった。
だから、すぐに話をユリカのことへとすり替えた。