ダブルベッド・シンドローム
しかし、知っていたか知っていなかったかといえば、私は知っていたのであるが、このことを暴露すれば、浜田先生は「ショックだ」と事前に宣言しているわけだから、私は慎重になった。
「先生、それは、どこで聞いた話ですか?」
まずは先生がすでに知っている情報以上のことを、私から漏らすことのないように、先生の知る事実の範囲を確かめねばならなかった。
それは少し、先生を裏切っていることになるのだが、私はここで、また汚い感情が入り交じってきて、ここで無条件に先生の味方をする義理はないと思った。
先生は私を愛さなかった人なのだから。
「ユリカが辞めてからさ、けっこう病院の女の子に言われてたんだよね。俺、その子達が僻んでるだけだろうと思ってたんだけど、この間、萩原さんにも言われてさ。萩原さんって、ほら、事務のお局さん、いたでしょ。あの人あんまり噂とか話さないのに、わざわざ言ってきたから、心配になってさ、この間、ユリカ本人に問いただしたんだよ。そしたら、だったら悪い?って言われて。」
「・・・そんな、」
「宮田さんは、知ってたんだね?」
「・・・すみません。」
「やっぱりそうかあ、俺、馬鹿みたいだね。」
私は、私が先生によって洞窟に引き籠っていたときのことを思い出した。
自分がどうしようもなく惨めになった気分になるのだ。
もしや今、先生もそうなってしまっているのではないか、そして私は、それに加担したことになるのだろうか、そう考えて、そしておそらくその考えは間違っていないのだと自覚をしてから、私はそれでも、先生はそんなに絶望的な状況にはいないと判断した。
なぜなら、どんな理由であれ、浜田先生はユリカを愛していて、ユリカは浜田先生を愛すると誓ったのだ。
二人の外には、私を含め、そこに至らない不幸な恋がいくつもあったはずなのだ。
先生は、自分がどれほど幸せであったのか、自覚するべきである。