ダブルベッド・シンドローム


「浜田先生。確かに、ユリカは、人よりも結婚に関して意気込みが強く、またそれを周囲に隠すこともしていませんでした。病院の女の子が言っていることに近いこと、いえ、もうまったくそれと同じことを口にしていたこともあるにはあります。でも、私はユリカの友達として言いますが、それが全て、ユリカの本意というわけではないと思います。それが今まで、浜田先生に、このことを伝えなかった理由でもあります。」


私の言ったことは本当であり、ユリカの発言は、結局のところ浜田先生を好きだからアタックしているのではなく、あくまで婚活をしているだけだ、という予防線の意味もあったはずなのだ。

予防線ということは、つまりは本当は、浜田先生を好きだったいうことだ。

ユリカが誰でもいいなどと心から思っているはずがない、それがどこかで私も感じ取れてしまっていたから、だから浜田先生に言いつけるという発想すらなかったのである。

誰でもいいなどと、ユリカの言ったことはやはり強がりで、本当は浜田先生のことを心から愛していたのだとしたら、その上で私が要らぬことを先生に言うとすると、それは嘘を伝えたことになる。

私はあの頃、浜田先生が好きだったのに、そんな小さなリスクすら負いたくはなかったのだ。


私は、あのとき背負こんだはずのものが、呑気な病院の女の子たちによって簡単に紐解かれてしまったのだと思うと、悔しくなった。


「あの、浜田先生、私、やっぱりどうしても納得いかないのですが。先生が問い詰めたら、ユリカが認めたとおっしゃいますが、私はユリカがそこでそんなことを言うとは思えません。」

「でも事実だよ。そう言ったんだ。だったら何、って。」

「ですから、そう言いたくなるような原因が、もっと前からあったんじゃないですか。そのときのユリカは、別の要因で自暴自棄になっていたとしか思えないんですが。」

「じゃあそれって何!?宮田さんは何だと思うの!?」


私の言い方も悪かったのだが、先生は興奮して、私の両肩をつかんで、揺さぶった。


「先生、ちょっと、」


視界がガクンガクンと揺れたせいか、私は声をかけられるまで、戻った専務がこちらへ来ていることに気づかなかった。

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