ダブルベッド・シンドローム
「何してらっしゃるんですか?」
専務の腕が伸びてきて、私を揺さぶっている浜田先生の腕をガッシリと捕まえて、それを止めた。
端から見れば、先生は私に無理矢理絡んでいるようにも見えたため、私は咄嗟に、先生を庇う意味で、「専務、違うんです。」と言っていた。
しかしそう言った後で、これでは浮気の言い訳をしているようだ、と思ったのだが、そして浮気ではないものの、先生は私が一度好きになった人であり、この状況の正当な説明が思いつかなくなった。
「え、宮田さんとこの専務さんなんですか?いつもお世話になっています、宮田さんの友人の浜田です。病院関係の。」
先生はすっかり落ち着いてそう言ったが、友人という紹介は、今はあまり好ましくなかった。
「ご友人ですか。こちらこそ、お世話になっています。株式会社DOSHIMAの、堂島慶一と申します。」
一言、二言、言葉を交わしただけで、浜田先生はすぐに会場に戻っていった。
少しだけ、私に視線を送りながらであった。
私は専務が来てくれて、正直助かった。
あれ以上探られたとしても、ユリカが戻ってくる方法なんて思い当たらなかったのだ。
ユリカがいるところは、おそらく実家だと予想はついた。
私はくじけるとすぐ実家を頼るが、ユリカだってきっとそこは同じで、ただどれほど追い詰められてから頼るかが違うだけであり、女なら、男と離れて戻れるのはやはりそこだけしかないはずだ。
しかし先生は、彼女の実家を訪ねるのを最終手段にしているのだろう。
もっと時間をかけて探してから、最終手段をとろうと思っているのだろうが、そうして手遅れになってから訪ねた場合、彼女の両親にも責められてしまうことが予想できないのだろうか。
「ご友人に会うとは、偶然でしたね。」
先生が見えなくなってから、専務はふいにそう言った。