ダブルベッド・シンドローム



「では、これならどうですか。DOSHIMAの総務部で菜々子さんを採用させます。そこで働くというのは。」

「え、DOSHIMAで?」

「はい。それなら僕の目も届きますし、父も納得するでしょう。父は菜々子さんを気に入っていますから、会社内で会えることを歓迎するはずです。」


慶一さんはやたらと「父は菜々子さんを気に入っていますから」と言いたがるが、それは私への褒め言葉ではなく、まさか嫉妬の表れではないかとヒヤリとした。

それは、社長さんに気に入られている私への嫉妬という意味である。



私の希望も叶えると同時に、社長さんの納得のいく形に収めることは、本当は私にとっては本意でない。

しかしこれ以上は単なる私のワガママになると思った。

それこそ私の、慶一さんが一番に優先しようとする社長さんへの嫉妬をむき出しにすることになる。



「分かりました。それでお願いします。ご迷惑をおかけしないように頑張ります。」

「良かった。こちらこそ、条件を出してしまって申し訳ありません。」



その夜も、ダブルベットでは何も起きなかった。


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