クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「なぁ。これ、病院行った方がいいんじゃねーの。市販薬で治まる熱か?」
「薬飲んで寝れば大丈夫です。それに、病院は隠れSM施設ですから行きません」

言いながら、薬を三錠飲む。
熱に重点的に効くタイプだから、これを飲んで安静にしていれば下がるだろう。

幸い、熱以外の症状はないし、問題ない。
……ただ、久しぶりだからか身体が思いの外、だるいけれど。

「私、もう寝ます。起きたらまた熱も計りますし、なにか食べて薬も飲みますから大丈夫です。ありがとうございました」

八坂さんを玄関まで見送ろうと試みるも、立ち上がるとフラッとしてしまい、諦める。

会社からここまでは歩けていたのに……気が緩んだせいかもしれない。
ダルくて仕方がない。

「すみません。寝ます……。部屋を出たら、鍵かけてポストに入れておいてもらえますか……。今日は本当にありがとうございました」

昼間よりもぼんやりしている頭の中。
遠くなっているように感じる、耳。熱すぎる身体。

一刻も早く休みたくて、ベッドに倒れるようにして横になった。

夏だっていうのに、寒くて仕方ない。
いつも使っている夏用の軽い毛布にくるまっても、まだ寒気を感じた。

だからといって、クローゼットから毛布を出す気力は残っていない。

このまま横になっていれば、寒気よりも眠気が勝ちそうだし、寝ちゃえばいいや。

そんな風に考え、意識がとろとろとしてきたとき、不意に重さを感じた。
そして、じょじょに寒さが遠のいていく。

瞼を上げられないまま、あったかいな……と思い、そのまま、誘われるまま眠りに落ちた。



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