きたない心をキミにあげる。
最近のアイドルやアニメの話で盛り上がり、メガネも返してもらう。
それから、俺は2人に尋ねた。
「弘樹の葬式、行った?」と。
窓際にいるせいで逆光になっていたが、彼らの表情がふっと曇ったことが分かった。
俺の意識がない間に弘樹の通夜が、
治療と検査漬けでベッドから動けない間に葬式が行われていた。
「うん。行ってあいつとお別れしてきたよ。もちろん、まだ受け入れられねーけど」
「みんなすげー泣いてた。でもあいつの家族、すごかったよ。絶対悲しいはずなのに、みんなの前では気丈にふるまってた」
「そっか」
窓の外は少しずつ明かりを失っていく。
もうすぐ面会時間が終わってしまう。
壁にある時計を視線だけで確認した時。
「なぁ、圭太。お前は何も悪くないんだからな」
熱血系である友達が、顔をゆがめながら言葉を発した。
「え?」
「お前、自分を責めてそうで心配なんだよ。何で俺だけ助かったんだよ、って感じで」
「弘樹が亡くなったのは悲しいよ。すげぇ泣いたよ。でも圭太が生きてて俺らも救われたっていうか……」
普段はフザけてばかりの友達も、真剣な声を俺に向けた。
「うん。ごめん、俺もまだ気持ちの整理ついてない。でも、ありがとう」
少しだけ心が軽くなった。
俺を心配してくれる母や友達。
俺を助けてくれた弘樹。
みんなのためにも、俺は生きていかなければいけない。
ほんの少しだけ、そう思えるようになってきた。
「あと、今まで知らなかったけど。弘樹のやつ、妹いるんだよ」
「へ。まじ?」
「葬式で初めて見たんだけど、すげぇ可愛かった。たぶん年はあんま離れてなさそう」
――妹?
その言葉に俺は違和感を覚えた。