きたない心をキミにあげる。
弘樹が買ったのは、キラキラした石(何と呼ぶかは知らない)が金色のチェーンで繋がれた華奢なブレスレットだった。
女子女子した空間に疲れた俺たちは、
ショッピング街を離れ、大盛りご飯で有名な定食屋へと向かうことにした。
足を進めるごとに流れる人は減っていく。
青信号の横断歩道を2人だけで渡っていた。
『なぁ。聞いていい?』
『何を?』
真剣にアクセサリーを選ぶ彼の姿をふと思い出し、
俺は、心の中にとどめていた疑問を投げかけた。
『それ、誰にあげるの? とか』
よくつるんではいるが、弘樹には色々と謎な部分があった。
彼女を作らない理由はもちろん、
例えば、好みのタイプだったり、家で何をしているかだったり、どーてーを卒業済みか、だったり。
深く聞いてみようとしても、別に普通だよとか、うーんどうかなぁなどと言われたりする。
たぶん彼はまわりに自分をひけらかすことが嫌いなのだと思う。