きたない心をキミにあげる。
だから、横断歩道の上で、
『誰にも秘密にしてる、大切な人』
と彼が答えた瞬間、俺は上手くリアクションをとることができなかった。
『どうしたの。そんな驚いた顔して』
『や、だってお前、そういうこと話してくれるの初めてじゃん』
遠くから車のエンジン音が近づいてくる。
歩行者信号はまだ点滅していないため、立ち止まったまま俺は続けた。
『なんか、嬉しくて』
『……え』
弘樹もまた不思議そうな顔で俺を見つめた。
――誰にも秘密にしている、大切な人。
他人に打ち明けるのは、初めてなのだろうか。
もしそうだとしたら、対象が俺であることが単純に嬉しかった。
でも、だったら今日俺じゃなくて、ほかのヤツ誘えよ。
女に縁のない人生を送る俺なんか、全然戦力にならねーし!
そう思いながらも、
俺は彼に詳しく聞いてみようと思った。
『喜んでくれるといいね、そのプレゼント』
今日の弘樹は、いつもより心を開いてくれるような気がしたから。