きたない心をキミにあげる。
☆
色々と検査を受けた結果、3日間意識不明だったものの、命や脳に問題はないらしい。
打撲と骨へのヒビは1ヶ月あれば回復予定。
右足は複雑骨折しているが、リハビリすれば半年程度で普通の生活に戻れるだろう、とのことだった。
俺は助かった。
その代わり、弘樹は二度と帰らぬ人となった。
「俺……あの時、あいつに助けられたんだよ。何で、あいつだけ?」
「弘樹くんのことは残念だったけど……」
「何でだよ! 弘樹は? 死んだとか嘘だろ? うあぁ……あ!」
事実を受け入れようとも拒否反応を起こすためか、
過呼吸気味で涙を流すことしかできない。
そんな俺を母は優しく抱きしめてくれた。
「母さん、こんなこと言っていいか分かんないけど、圭太が生きていてくれてよかった」
「何してんだよ弘樹のやつ、どうして逃げなかったんだよ。そしたらあいつ死なずにすんだのに……」
「圭太、落ち着いて」
「俺が気づけばよかったんだ……横断歩道、早く渡ればよかったんだ」
赤信号を突っ切ってきた乗用車。
運転していた人は、何らかの原因で意識を失っていた可能性があるらしい。
あれは不慮の事故だ。
加害者と被害者の弘樹は亡くなった。
俺だけが生き残ったのは、弘樹がとっさに俺を突き飛ばしてくれたから。