きたない心をキミにあげる。











色々と検査を受けた結果、3日間意識不明だったものの、命や脳に問題はないらしい。


打撲と骨へのヒビは1ヶ月あれば回復予定。


右足は複雑骨折しているが、リハビリすれば半年程度で普通の生活に戻れるだろう、とのことだった。



俺は助かった。



その代わり、弘樹は二度と帰らぬ人となった。



「俺……あの時、あいつに助けられたんだよ。何で、あいつだけ?」


「弘樹くんのことは残念だったけど……」


「何でだよ! 弘樹は? 死んだとか嘘だろ? うあぁ……あ!」 



事実を受け入れようとも拒否反応を起こすためか、

過呼吸気味で涙を流すことしかできない。


そんな俺を母は優しく抱きしめてくれた。



「母さん、こんなこと言っていいか分かんないけど、圭太が生きていてくれてよかった」


「何してんだよ弘樹のやつ、どうして逃げなかったんだよ。そしたらあいつ死なずにすんだのに……」


「圭太、落ち着いて」


「俺が気づけばよかったんだ……横断歩道、早く渡ればよかったんだ」



赤信号を突っ切ってきた乗用車。


運転していた人は、何らかの原因で意識を失っていた可能性があるらしい。



あれは不慮の事故だ。



加害者と被害者の弘樹は亡くなった。


俺だけが生き残ったのは、弘樹がとっさに俺を突き飛ばしてくれたから。




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