眼鏡とハンバーグと指環と制服と
「うん」

「……そうか。
思い出したんだ。
……なんか他に思い出したこと、ない?」

「ない、けど?」

「うん。
じゃあいいんだ。
じゃあ……」

夏生はなにか考え込んでる。

たぶん、「他」っていうのは、所々飛んじゃってる、私の小さいときの記憶な
んだと思う。

私は小学校低学年くらいまでの記憶が、所々「飛んで」いる。
小さくて覚えてないんじゃなくて、ほんとに飛んで、完全になかったことにな
ってる。

両親のお葬式のとき、夏生の腕の中で泣いたことだって、あのとき初めて思い
出したくらいだし。

飛んでる記憶の中で一番大きいのが、両親がいた、ってこと。

気が付いたときには私、生まれたときからおばあちゃんとふたりだと思って
た。

おばあちゃんが私を産んだとすら思ってた。

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