眼鏡とハンバーグと指環と制服と
夏生が出て行ってから、痺れが残る足でどうにか歩き、台所の棚を漁る。
作る余裕はないけど、即席のお味噌汁くらいは用意したい。
お湯を沸かしてネギを切る。
お味噌タイプの奴をお椀に入れて、あとはお湯を注げば完成。

夏生が帰ってくるのを待ちながら、小さい頃のことを思い出してた。

昔から私が悪いことをすると、夏生はああやって正座させてお説教する。

亜紀ちゃんと一緒にしたいたずらがバレたときは、ふたり一緒に。

大人は笑ってみてたけど、正座させられてる私たちは堪ったもんじゃない。
なにしろ夏生のお説教は、あのように長いんだから。

そしていつも、足が痺れて動けない私たちに、
「鍛え方が足りないんだよ」
って涼しい顔で言い放って。

それにむかついて、ぎゃふんといわせたくて、またいたずらするんだけど、や
っぱりすぐにバレちゃってお説教。

何度繰り返しても勝てなかった。

大きくなったいまでも、やっぱり勝てないんだなー。

「ただいまー」

「おかえりー」
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