暁天の星


「…あきら?」



目をこすった菫が電話の向こうに問いかける。




「あっ。」



俺は菫から携帯を取り上げてスピーカーに設定した。




『幼稚園行かないんだって?』

「うん…。」

『どうして?』



ぎゅっと服の袖を握りしめる菫が何を言おうとして、何を思ってるのか。





「ごめん…。あきら…。」




陶器のような肌を滑り落ちる菫の涙はきっと何よりも綺麗なものだ。


さめざめと泣く菫をどうにかしてやりたいのに。




「すぅが、すぅが、…弱いから。」



大きな瞳が潤む。


菫はそれしか言わなかった。




晃もそれ以上菫に何かを問いかけることはなかった。



繋がった電話をただ握りしめてる。




『弱くなんかねえよ。』



携帯の向こう側で晃はそう言った。




『泣くの我慢して今までやってきたんだ。自分を責めなくていい。』



晃の言葉はいつもストレートで。


5歳児には難しいと思うけど、意味を理解しようと必死なんだと思う。



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