暁天の星
いつも家で見るやり取り。
そんなアホみたいな光景を那月は心底嬉しそうに眺めて。
「ずっと肩車してもらうことが憧れだったんだけど。」
一度切った言葉を、ゆっくり吐き出した。
「菫と颯太が肩車されてるのを見る方が、僕は満足。」
想像を裏切った先にあるものが、見えない何かをぎゅっと握り締める。
器用に解かれたそれは、やっぱり那月が解いてくれたものだと思う。
何もできなくて、でも何かしたくてぐしゃぐしゃと那月の頭を撫でた。
お前を肩車できる日に、俺がしてやれてたら。
そんな思いは那月を撫でた右手に込めるしかなくて。
まだランドセルを背負ってるはずのこいつを、こんなに大人にしてしまったことが悔しかったから。
俺もまだ子どもだけど、こいつを甘やかしてあげられるぐらいの兄貴でいよう。
「さすがにナツを肩車はできねえな〜。」
「それは遠慮するよ。」
そう笑う那月が眩しく見えた。