暁天の星


【那月】


僕の腕の中にある、温かくて大切なもの。




「妃那〜。那月だよ、な、つ、き。」



里香ちゃんの問いかけに妃那ちゃんは少し目を向けて僕に顔を埋めた。


無防備に全体重を預けてくれる妃那ちゃん。




嬉しかった。


それ以外に思うことなんてなくて。





僕が生きる僕の世界がちっぽけなものだと感じた。


ま、そんなの当たり前なんだけどね。






お日様が照らす空間に幸せな風が吹いたような気がした。



ああ、そのくらい僕は浮かれてるんだな。





「那月、妃那の鼻だけ気をつけろよ。コイツお構いなしに鼻水つけてくるからな。」



ニッと笑ったハルがさっきのベンチに腰掛けながら言う。




「またそういう意地悪言って!」

「意地悪じゃねえよ。」

「捻くれてるって言うのよ。」




里香ちゃんとハルが視線をぶつけた。


その後に笑い合う。



よくこんな言い合いをしてる2人だけど、僕にはそれが微笑ましかった。



2人だけの空間じゃない、輪を作ってくれていることも嬉しかった。



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