新・鉢植右から3番目


「大地いいいいいいいい~っ!!!このばか息子!不届き者!奥さんが頑張って命賭けてあんたの子供を産んでくれたのに、二人の顔すら見に来ないとはどういうこと!?ふざけたこと言ってないで今すぐ病院に来なさい!!」

 私と私の母親は仰天して目が点だった。冴子母さんはガチャンと電話をたたききると(病院内に設置されてる電話を使用していたのでね)、くるりと振り返って私達親子に頭を下げた。

「本当に、本当~にごめんね。うちのどうしようもない息子が来たらちゃんと制裁を与えるから許してね」

 って。

 うちの母が慌てて娘婿である大地をフォローしていて、私はもう笑うしかない状態に疲れてベッドに寝転んだのだった。

 まあとにかく、ダレ男はちゃんと夜には来た。かなり遅かったのは、当然予想された冴子母の制裁アンド叱責を回避するためだったのだろう。やつは母子同室の産院の私の部屋に入り、一言もないままでスタスターっとベビーベッドに近づいて、いつもの無表情でじ~っくりと自分の娘を眺めていた。

 確かに無表情だった。

 口元はにこりともしてなかったし、相変わらず無言で、ただじっと見ていただけだった。

 だけど、ヤツが喜んでいるのが私には判った。

 彼をとりまく、いつもより柔らかい空気で。

 赤ん坊に穴が空くのではないかという勢いで見詰めていたので、ベッドから私は笑う。

「逃げないわよ、赤ちゃんは」

 そう言って。

 するとヤツはチラリと私を見て、ぼそっと言った。

「・・・名前、どうするの」

「うん?」

 出産で消耗して多少熱があった私は、ベッドに寝転んだままで唸る。


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