新・鉢植右から3番目


 目の前にばさーっと大量のパンフレットを置いて、アレコレと説明を始める。ほらほらだってこれを見てって。素敵でしょ?ねえええええ?

「それってキャンセルできないの、都?折角だからお母さん達がいいものをおくってあげるわよう!なんなら二つ持ったって、悪いことはないでしょ?」

「もうお金は払ってしまったの、都ちゃん?もしかして知り合いから頂くとか、そういうことなの?」

 ぎゃんぎゃん喚くうちの母と違って優しく聞いてくれる冴子母さんの言葉は、一々私を助けてくれる。そんなわけで私はしっかりその言葉尻を捕まえて、また首をぶんぶんと縦に振りまくった。

「そうそう。そうなんです!私達の共通の友達が、人形のデザインをしていて。ええ、それで出産祝いにくれるっていうもので」

 そんな知り合いは勿論いないが。

 大体私達夫婦の共通の知り合いといったら噂の女王様で、母校である山の上高校元生徒会副会長である渡瀬さんと、私の(一応)親友であるデザイナーの榊奈緒くらいで、そのどちらもがそんな平凡で普通のお祝い事とは無縁のような女性達なのだ。

 渡瀬さんにいたっては「大人のオモチャ」を段ボール一杯に送ってくるような人だし、奈央はセンスを生かして素敵なプレゼントはくれるけれども子供用であったことはない。

 一応私にはまともで常識的な友達もいるが彼らは全員が既に既婚者で、出産した時にちゃんと普通のお祝いを頂いている。

 だけどいいのだ!嘘も方便っていうでしょ?私は是非とも、この提案はお断りしたいのだから。


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