プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

なにかを言いかけたところで、部屋のドアがノックされた。
私が「はい」と返すと、入って来たのは雪さんだった。
トレーを手にしている。

お父さんがいることに気づいて、「旦那様がいらっしゃるとは。大変失礼いたしました」と静々と頭を下げる。


「いや、私はもう行くから」


座ったとき同様に「よっこいしょ」という掛け声でお父さんが立ち上がる。
子供をあやすように私の頭をポンポンとしたあと、雪さんと入れ違いで部屋を出て行った。

雪さんは軽くお辞儀をして見送りドアを閉めた。


「日菜子様、実はご飯を炊きすぎてしまって。もしよろしかったら、おにぎりを食べていただけませんか?」


テーブルに置いた皿には、大きなおにぎりがふたつ載っていた。
ご飯が余ったというのは、雪さんの気遣いだろう。
私が本当はお腹が空いていることをお見通しだったのだ。

私はベッドからソファへと移った。



「……ありがと、雪さん」


なんだかとても恥ずかしい。
皿からひとつ取りかぶりついた。

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