プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「それじゃ、これ……」


涼香さんがバッグからなにかを取り出す。
鍵だった。


「祐希に渡しておいてもらえる?」

「はい……?」


なんの鍵?

手を出すのを躊躇っていると、涼香さんは私の手首を掴んで無理に握らせた。

もしかして、涼香さんの部屋の鍵……?

だとしたら、そんなもの私は預かれない。
――預かりたくない。


「あの、困ります」


突き返そうとすると、きっぱりと拒否された。


「今夜でも明日でも大丈夫って伝えて」


そんなの、自分で連絡すればいいのに。
どうして私に。

もしかしたら、涼香さんはこれをわざと私に渡したのかもしれない。
私の想いを敏感に嗅ぎ取って。
ふたりの間に私の入る隙はないのだと牽制しているのかもしれない。

恋がこんなに厄介なものだとは知らなかった。
どんどん卑屈になっていく自分に気づかされる。

涼香さんは急いでいるからと、逸見本部長に軽く挨拶をして第二事業本部を出て行ってしまった。

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