プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「最低限のことって?」

「会社方針に始まり組織図から業績、これからの展望、それから専門用語なんかもある程度は」


業績に専門用語……?
今の段階ですら、気が遠くなりそう。


「そもそも、日菜子さん自身がどこに配属されるか知っていますか?」


質問されて初めて気がついた。
祐希が何部所属なのかすら知らないことを。

私の反応で事態を察した祐希は、眉間を指先でつまんで首を横に振った。
小さな溜息まで漏らす始末。
完全にあきれかえっている。


「……ごめんなさい」


謝罪の言葉しか出てこなかった。


「いえ。この家でぬくぬくと育ってきた日菜子さんですから、仕方ないでしょう」

「言葉が刺々しいよ……」

「そうですか? 正直なことを言ったまでです」


大真面目に言ってのけながら、口元に笑みを浮かべた。
清美おばさんには決して辛辣な言葉を使ったりしないのに、私には容赦がない。

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