プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
「嘘なんかではございません」
大袈裟に首を横に振る。
そんな様がおかしくてつい笑うと、彼女は「笑いごとではございません」と私をたしなめた。
「……本当に?」
「はい」
力強く雪さんが頷く。
確かに、六十五歳という年齢の割に動きは機敏だし、足音も立てない。
気配がなくて、気づけばすぐそばにいて驚いたことも何度もある。
なによりも、昨夜私が祐希の部屋にいたことを香りと空気で判別してしまうのだから。
……信じるしかないようだ。
雪さんという人は、なんてすごい人なんだろう。
くノ一の血が流れた、元看護師。
スーパー家政婦だ。
見た目のおっとりした風貌とのギャップが、あまりにも大きすぎる。
気持ちを落ち着けようと、雪さんが淹れてくれたコーヒーで喉を潤した。
……コーヒー?
そっか。
これ、使えないかな。
ふと思いついたことだった。
オープニングイベントに来てくれたお客様に、このコーヒーを振る舞ってはどうかと。