プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「それが……」


雪さんが顔を曇らせる。


「どうかしたの?」

「祐希様は家をお出になりました」

「……え? どういうこと?」


言っていることの意味がすぐに理解できない。


「さきほどお帰りになられて、大きなバッグに荷物を詰め込んで。旦那様と清美様にはご挨拶をしていかれたのですが……」

「どこに行ったの?」


聞いてから思い出した。
涼香さんのところだ。
昨夜、彼女の部屋の合鍵を渡したのは私だ。


「旦那様もお引き止めしたのですが、それでも意思は固かったようございます。清美様もかなりのショックを受けていらして、早々にお休みになられました」


そんな……。

まるで私を避けるかのような行動だった。
これ以上、同じ家に住んでいて、いつ何時無理なお願いをされるかわからないから、きっとそれを回避したのだ。

試しにそっと入ってみた祐希の部屋は、主を失くしたようには思えなかった。
荷物は、ほとんどがそのまま。
今にも帰って来そうな雰囲気だった。

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