プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

雪さんの言うように、おっとりとゆったりと生きてきた。
なにかに追われることは、今までなかったのだ。
ちょっとした進歩だ。


「日菜子様にこれほどまでに秘めた強さがあるとは知りませんでしたよ。これがギャップというものでしょうか」

「それを言うなら、雪さんのほうだよ。雪さんの正体こそそうでしょ」


私たちは笑い合った。

そして、そんなことを考えながら手を動かしていると、ようやく先が見えてきた。
ラスト十個。

雪さんが「あとひといきでございますよ」と激励する。
そうして百六十個すべてのプチコーヒーが完成した。


「やっと終わったー!」


両腕を大きく広げて、縮こまっていた背中を伸ばす。


「お疲れ様でした、日菜子様」

「雪さんも。本当にありがとう。助かりました」

「ですが日菜子様、ゆっくりしている暇はございませんよ」

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