プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

そうだった。
壁かけ時計は既に七時を回っている。
お店のオープンは十時。
急いでシャワーを浴びて、コーヒーを届けなければならない。

コーヒーの責任者なんてものにもなっているのだ。
遅れるわけにはいかない。

慌てて身支度を整え、大きい段ボールにコーヒーを詰めていく。
さすがに電車で運ぶのはつらいので、タクシーを呼ぶことにした。

お父さんも清美おばさんも、今日はオープニングセレモニーのテープカットがあるからと、早々に家を出て行った。

雪さんの「がんばってくださいね」という励ましを背中に受け、頷くことで返す。
総重量八キロ強の段ボールは、相当の負荷だった。

トランクに荷物を入れてもらい、後部座席に乗り込む。
行き先を告げ、シートに身体を預けた。


ところが、幹線道路は通勤ラッシュの最中。
短い間隔で設置された信号には何度もつかまり、途中からノロノロ運転になってしまった。
腕時計を見てみれば、午前九時まであと少し。
このままでは、何時に着くかわからない。


「すみません、ここでいいです」


お店までは、ここからまだ何キロかあるだろう。
駅も見当たらない。
自分の足で向かうしかなさそうだ。

< 167 / 260 >

この作品をシェア

pagetop