プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

タクシーが路側帯に寄せられる。
精算を済ませてトランクから荷物を取り出すと、歩道へと飛び出した。

なんせ重い段ボール。
走っているつもりが、早足で歩いている通行人より遅いという情けなさ。
それでも足を止めるわけにはいかない。
途中で腕がプルプルしてくる。
指先の力が今にも抜けてしまいそうだ。

祐希に迷惑をかけるわけにはいかない。
その気力だけでもっているようなものだった。

そして、目指すお店まであと少しというところだった。


「日菜子さん!」


視線のずっと先。
人波の向こうから見知った声が聞こえてきた。
段ボールから首を伸ばして見てみる。
祐希だった。

私を見つけて駆け出すと、私から段ボールを奪い取るようにした。

一気に重しを取られてバランスを崩す。
箱を掴んで直角に曲がった指は、持つべきものがなくなっても凍りついたように折れたままだ。
意識的に指を伸ばして、やっと解放されたことを認識できた。


「いったいなにがあったんですか!?」


さすがに焦っている。
オープンまであと三十分を切っているのだから、それも当然だ。

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