プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
スタッフは入口に並び、来店されたお客様ひとりずつに「いらっしゃいませ」と声をかける。
私は急いで自分のポジションであるコーヒーコーナーへ向かった。
用意したミネラルウォーターをドリップポットに入れて沸かし始める。
その間に焙煎したコーヒー豆やコーヒーフィルターを用意した。
最初の一杯が入ると、香ばしい匂いが広がった。
お父さんや清美おばさんは、そばを通りながら微笑みだけで私に合図を送る。
私も軽く目を細めて笑みを返した。
コーヒーに引き寄せられたか、お客様の相手をしていた涼香さんがやってきた。
「珍しいコーヒーを集めてくれたんですってね。どうもありがとう」
「いえいえ!」
集めたのは、ほぼ雪さんひとりだ。
「しかも、お客様へのプレゼントまで用意してくれたなんて。素敵なオープニングになりそう」
涼子さんは清々しく笑った。
最後までバタバタしてしまったことは、どうか彼女の耳に入りませんように。
仕事も恋も、なにもかも適わない涼子さんにこれ以上無様なところは知られたくないから。
涼子さんは「私にもこのピンクブルボン、今度飲ませてね」とふんわり微笑みながら言い、接客へ戻って行ったのだった。