プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

祐希が立ち去ったあとベッドにうつ伏せになり、彼が持って来た資料をパラパラとめくる。

会社案内のトップページには、社長であるお父さんの顔写真と挨拶が掲載されている。
いかついながらも、いつもの穏やかな表情を残しつつ凛々しい眼差しが私に向けられて、娘ながら思わずたじろいだ。

“日常に夢と喜びを。生活に潤いと彩りを”というキャッチフレーズが大きく書かれ、その下に経営方針や経営戦略が続いていた。


「えっと……ブランド軸経営を基本戦略にし、独自の企画力、クオリティーとコストバランスのとれた生産……」


ボソボソと声に出して読んでみる。
こうしてお父さんの会社のことを知るのは、この歳になって初めてだ。
ROEだとかSCMだとか、わからない言葉が出てくるたびにつまづきながら、会社案内のつかみの部分を読み終えた。

ページをめくると組織図、その次には先輩社員がどういった仕事をしているかという情報が写真付で数ページにわたって掲載されていた。
その中に祐希の姿を見つけて驚く。
そこにいたのは、私の知っている祐希の顔とは少し違った。

インタビュアー相手なのかお客様相手なのか、自信に満ち溢れてキラキラしていた。

祐希は、私の知らない世界で私の知らないことを体験している。
そこが単に夢の世界じゃないことは、いくら世間知らずの私でもわかる。
でも、私もそこにいってみたい。
素直にそう思った。

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