プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「どこに行く気?」


ケンカ腰に聞くと、祐希は「僕の部屋です」と窓の外を見たまま言った。


「ちょ、ちょっとふざけないで! 涼香さんと住んでる部屋なんか行きたくないから!」


暴れながらドアに手をかけると、祐希に阻まれた。
走行中の車のドアを開けることがどれほど危険か、わかってはいた。
けれど、それ以上に頭は錯乱状態だった。


「離してよ! 祐希!」

「少し大人しくしてもらえませんか?」

「ちょっ――」


肩を掴まれると同時に、唇が塞がれた。
祐希の長いまつ毛が、すぐそばにある。

――いや、まつ毛だけじゃない。
唇は触れ合っているのだから。

マイナス三十度の中にいきなり放り込まれたようだった。
全身が凍りついてカチコチ。
押さえ込まれているわけでもないのに、身動きが取れなかった。
愛情を微塵も感じられないキスだった。

しばらくすると、祐希は私から離れた。
眼差しを向けられたようだったけれど、私はそちらを見られなかった。
祐希はシートに座り直すと、足を組んで窓の外へ顔を向けたようだった。

キスで動きを封じ込めようなんて、祐希はずるい。
そうされてしまえば、私は抵抗できないのだから。

うるさいほどの鼓動が鳴りやまなかった。

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