プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔
たぶん渡辺店長も祐希に信頼を寄せているんだろう。
中には厳しいことを言われている場面もあったが、素直に受け入れて売場の手直しをしていた。
それは次に向かった直営店も同じで、本社の社員なんて口うるさくて鬱陶しいという態度はまったくなく、祐希の言葉に熱心に耳を傾けていた。
実際、祐希の手によって短時間に大幅な変貌を遂げた売場は、素人の私から見てもわかりやすく、通りがかりに思わず立ち寄ってしまいたくなる店になった。
「すごいね、祐希」
率直な感想だった。
仕事ができる男だと薄々感じてはいたけれど、ここまで見せつけられると私まで気分が高揚してしまう。
店を出て駅まで歩くのも、足取りがやけに軽くなる。
それなのに彼ときたら、「“祐希”?」と嫌な指摘をしてよこした。
祐希に私のテンションは伝わらないようだ。
「すごいですね、真壁さん」
私が言い直すと鼻を軽く鳴らして笑った。
「特にすごいわけでもない。普通ですよ」
あれが普通なのだとしたら、口を挟む隙すらない私は存在すら価値がなくなってしまうじゃないか。