プライベートレッスン 〜 同居人の甘い素顔

「その品種の木は植物学的にも非常に希少でございまして、大量収穫が困難なんだそうです。隠し持っていたわけではなく、なかなか手に入らないものなんでございます」


茶化した私に大真面目に雪さんが解説する。


「酸味が強いので、ローストにコツが必要とされます」


そうだとすると、今朝のこの一杯は雪さん的に最高の出来ということだ。
どこか自信に満ちた笑みを彼女は浮かべた。


「さて、では私は仕事に戻りますので。なにかございましたら、このベルを鳴らしてください」


そう言って彼女が私に手渡したのは、手のひらサイズの呼び鈴だった。
今までこんなものを使って雪さんを呼んだことなんてないのに。


「その足ではなにかとご不便でしょうから。それほど重度の捻挫ではございませんので、大事にしていらっしゃれば月曜日には会社に行けるかと存じます」

「……そっか。ありがとう」


怪我した足は指先だけで突いて歩けなくもないが、無理をして長引かせたくない。
月曜日は仕事に行きたいのだ。

雪さんの言葉に甘えることにした。

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